浦戸諸島は、日本の種牡蠣の一大生産拠点でもあり、先祖代々受け継がれてきた牡蠣養殖の歴史があります。
日本三景・松島湾に点在する島々の一つとして、美しい自然景観を守り続けています。

その地に暮らし、歴史を繋ぎ、継承し続けている島の産業にフォーカスを当て、ご紹介します。
浦戸諸島では、島民の高齢化や担い手不足は深刻な問題となっています。しかし、離島であることの強みを生かし、自然と共存することで発展した浦戸の産業は確実に存在し、島民達は笑顔で、豊かな日々を過ごしています。

牡蠣

浦戸諸島では、300年以上前から牡蠣養殖をおこなっており、日本でも有数な「牡蠣養殖・種牡蠣」の産地として多くのファンを持っています。
松島湾に浮かぶ無数の島々に囲まれたこの水域では、波も程度に穏やかで水質(ミネラル成分)や水深(浅瀬)など、牡蠣の育成に必要な要素が全て揃っており、この環境で育まれた牡蠣は身がプリプリで、噛めば海の恵みを感じる深い旨味が口の中いっぱいに広がり、何粒でも食べたくなる美味しさです。

収穫の全盛期(11月〜1月)になると島のお母さん達が作業小屋に集まり、総出で牡蠣剥きと出荷作業を行います。
これは、季節の訪れを感じる島の風景であり、人々に笑顔と賑わいを与え、貴重な収入源(基幹産業)として浦戸諸島を支えています。
また、1960年代にフランスでは大寒波や寄生虫などが重なり、牡蠣が絶滅するほどの壊滅的なダメージを受けた際に、浦戸産を含む宮城県産の種牡蠣が大量にフランスへ輸出され、絶滅の危機を救ったという歴史があります。
今でもフランスで日本原種と言われ、流通している牡蠣の約9割が当時の種牡蠣の子孫と言われており、美食の国フランスの料理には欠かせない存在となっています。

海苔

浦戸の海苔は、寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかる栄養分が一番豊富な潮目で養殖しているので、ミネラルが豊富で海の恵みがたっぷりと含まれるため、甘味や風味の強い海苔が収穫できます。
口の中でパリッとした歯触り、ふわっと解けていく食感、広がる海苔本来の甘みが特徴で、過去の品評会において、皇室献上とされたこともあります。

成長した海苔は、丁寧に収穫され、島で加工し船で本土へ出荷されます。
大規模生産ではなく、島の人の手で生産されているため、市場に多くは流通していませんが、一般的な「焼き海苔」はもちろん、「味付け海苔」や「生のりの佃煮」なども島内で生産されています。
最近では、塩竈市のふるさと納税にも採用され、人気の返礼品となっています。

稲作

浦戸諸島の寒風沢(さぶさわ)島では、「ふゆみずたんぼ(冬期湛水)」という伝統的な農法で米作りが行われています。
通常の稲作では秋の収穫時に水を抜き、翌春まで水を張りませんが、「ふゆみずたんぼ」では稲刈りが終った後も水を抜きません。

これは、川が無く、(海水ではない)水が貴重な寒風沢での知恵が詰まっただけでなく、雪どけ水や雨水を農業用水として利用でき、長い時間をかけて泥の中で微生物を育成させることで、土壌に豊かな栄養を与えるという、理に適った農法です。
稲刈り後は、これら全てを天日干しで仕上げ、天然の恵みを存分に生かした幻の寒風沢米(ササニシキ)が完成します。

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